農薬とコウノトリ

コウノトリと農薬

コウノトリ

コウノトリはヨーロッパやアジアに分布し、赤松などの木の上に巣を作り繁殖をしていました。羽根を広げると2mほどになる大きな鳥です。

いつからコウノトリは日本にいるのか

いつから日本にいるのかというのを調べると、大阪の池島・福万寺の遺跡からコウノトリがいたとされる足跡がみつかりました。約2400年前の弥生時代のものです。

また900年前には前橋市の水田跡で見つかっています。コウノトリは、ずいぶん昔から住んでいたのですね。

江戸時代の、出石にある「鶴山」はコウノトリが繁殖する場所であり、出石藩は「鶴山」を禁漁区にしてコウノトリの保護をしていました。明治になっても多くの人たちがコウノトリを見ようと、この鶴山に来られて茶店まで作られ、そこからコウノトリを見物できるようにしていました。

鶴山

日本のコウノトリが絶滅した1971年

日本にも多くのコウノトリがいたのですが、1964年に繁殖個体としては絶滅して1971年には野生のコウノトリは絶滅しました。

コウノトリ中野巣塔

その原因は明治時代に狩りが解禁されたことで減りました。また、川や湿地などの開発によって生息地が狭まったこともあるでしょう。戦時中に赤松などの伐採して巣作りするところがなくなったこともあります。もう一つ、農薬の使用で生物濃縮などによって大型の鳥であっても絶滅に至ることがあるのでしょう。

コウノトリの野生復帰へ

コウノトリの郷公園

豊岡市は1999年に開園した「兵庫県立コウノトリの郷公園」では保護増殖と野生復帰を試みるようになりました。

農薬の使用で有機水銀化合物を含んだものは米を食べることによって人体に有害であるとわかり、1973年から使用禁止となりました。田んぼに生き物がいなければコウノトリが餌を採取できないことから、無農薬で米を栽培するようになり、今では野生のコウノトリが200羽を超えるようになりました。

農薬とは

農作物や街路樹、公園などに使われる農薬は植物に発生する害虫を退治したり、病気にならないようにするものです。国が認めた農薬は人の健康や環境に影響が及ぼさないことを確かめて国が定めたものだけが使用されます。農作物が安定して生産されるには農薬を使用できることになっています。今ではヘリコプターで農薬をまいたり、ドローンを使って撒いていることがあります。

農薬は野外で使用され環境に撒かれるので生き物に影響がないかも考えなければなりません。農林水産省は悪影響にならないかどうか検討しているということです。農薬取締法に基づく登録された農薬のみ使用でき、登録は「使用できる作物」「使用できる時期」「使用しても良い量などの使用基準」を定めて、使用基準以外の方法で使用はできません。

農薬とは病気や害虫による被害をくい止めるために使われるのであって、害虫がいないのに使用する必要がありません。

コウノトリによって農業が変化する

鳴門ビオトープ

兵庫県豊岡市では多様な生き物が棲めるようにしてコウノトリの餌を確保しようと取り組みが始まり、「コウノトリ育むお米」を栽培するようになりました。

たつの市ではコウノトリが飛来する四国の中継地として「田んぼの生き物調査」と生きものが棲む田んぼづくりが行われています。徳島県鳴門市ではコウノトリのために農薬を減らした米の販売が行われ、また、レンコン田にはカエルやイナゴが多く、イナゴが飛ぶ音がレンコンの大きな葉によって聞こえます。

鳴門レンコン田

福井県越前市では白山、坂口地区ではコウノトリの巣搭があり、安養寺はコウノトリのペアのオスが亡くなったのでどうなるかわかりませんが、坂口地区ではナナちゃんとイチローくんがペアで健在です。「コウノトリを呼び戻す農法米」が売られています。コウノトリの餌である蛇、カエル、ドジョウ、魚などが棲む環境にして農薬、化学肥料を使用せずに栽培したものです。

坂口地区コウノトリの雛

各地で農薬減の取り組みが行われています。これもコウノトリのお陰と言えるでしょう。コウノトリは島根県にも、石川県にもペアが雛を育てています。コウノトリが増えれば厄介者とならないように、環境を考えていかなければと思います。

ネオニコチノイド系農薬について

ネオニコチノイド系農薬は世界で使われている殺虫剤で、1990年代から市場に出回っているそうです。ネオニコチノイドの化合物は7種類あり販売されています。「ミツバチの大量死」はネオニコチノイド系との因果関係は科学的に証明されていません。

世界各地でハチの大量死が報告されています。ヨーロッパでは2000年代からネオニコチノイド系の殺虫剤を規制する動きが見られます。人間の脳や神経の発達の影響があるともいわれています。コウノトリたちや生き物たちが人と共生できるようになりたいものです。

道の駅星のふる里ふじはしから越前のコウノトリに会いに行く